○食べごろまで後、一歩か
今朝は雪が降るやもしれぬ−−。
どのテレビ局の天気予報でも昨晩は異口同音に言っていたもので、単純なキッタンはすっかりその気になりまして、ちょいと、いえ、かなり楽しみにしていたのでした。
通勤には厄介でしょうが、仕事場にこもっている身には、この上なき目の保養となりますから。
ところが、寒さと期待からいち早く目が覚め、窓の外を眺めれば、雪景色に特有のぱっと開けるような明るさが微塵もなく。
そして、菜園は銀世界ではなく雨に濡れて寒々と沈んでおりました。
けれど、良いこともあり。
温室のイチゴたちが日ごとに色づいてきたのですねえ。
毎年、いいところまで色づくと、鳥かネズミが掻っ攫っていく。
いくら精を出して育てても(実は半放任)、我らが口に入らないのはあまりに割りに合わない話(もっとも、考えようによっては今の世の中全体がそんな風で、一生懸命働く人はバカを見て、小ざかしい人が美味しいところをみんな掻っ攫っていってしまっているかもしれませんねえ)。
それで、早々に温室を手作りした・・・てな話は少し前にいたしましたか。
しかし、です。
温室を覆うビニールを100円ショップで買ったありあわせのテープで貼り合わせたのが仇となり、強風でビニールが剥がれてしまったのです。
一方、今年はまたどういうわけか、イチゴの結実がよく。
次第にその形がほどよく膨らみ、赤みもじわじわ増している。
これをまた横取りされるのは、管理人としてはあまりに不甲斐ない。
かくしてオトキさんが正月を返上し、半日がかりで温室の補修をしたのでした。
その間、キッタンは何をしていたのかって?
面目ない。
年末から持ち越した原稿書きに行き詰まり、パソコンの前で頭を抱えておりました。
さて、オトキさんは、ビニールが足りなかったために開けっ放しにしておいた正面もしっかり覆って、いわば万全のつくりで作業終了。
さあ、これでどうだ。
食べられるものなら食べてみろ、ってなもんです。
○鳥もさすがに諦めた
なんといっても手製ですから、あちこちに隙間があります。
それでも、朝の9時ごろの段階で、温室の室温15,6度。
今朝は5度近くまで下がっていましたが、それでも、撮影のために扉代わりの正面のビニールをめくり上げると、空気が少しぬくもっているのを感じました。
日のあたっているときなら、25,6度まで上がることもあります。
イチゴにとってのベストな温度よりは低いけれど、この程度でもストレスはずっと軽減されるのでしょう、オトキさんが補修して以来、実の色づき方が早くなりました。
それだけでなく、面白いことがあったのですねえ。
正月中だったか、休み明けだったか、すでに記憶が定かではないのですが、ともかく、温室が補修された後のこと。
朝、パソコンに向かっておりますと、窓の外を黒い影がよぎりました。
ははあ、鳥が来たな。
さっぱり仕事の進まぬキッタンは、それを口実に席を立ち、窓辺へと向かいました。
と、窓の外、物干し棒に1羽の凛々しい鳥の姿。
駒鳥に比べてはるかに体躯が大きく、しかし、鳩ほどずんぐりではなく、毛並みならぬ灰色の羽根並みが実に美しい鳥であります。
尻尾が長く、そのスリムな姿でスーイスーイと細長い波型を描きながら飛んでいるのをよく見かけますが、菜園で間近に見るのは初めて。
多分、ヒヨドリでありましょう。
餌を探しに来たのだとすぐにわかりましたから、キッタンは窓を開けました。
臆病な鳥や人間に不慣れな鳥は、窓の音と人の気配で、すぐに飛び立っていくからです。
しかし、このヒヨドリはびくともしません。
それどころか、温室の上に飛び移ったのでした。
そして、しきりと頭を上下させています。
どうやら、温室内のイチゴを狙っているらしく。
ビニール越しでもイチゴの赤さが目に付くほどになっていたのです。
このヒヨドリは12月に菜園のイチゴを食べていった輩に違いなく。
実は23日以降もイチゴが見事に赤い部分だけ食べられてしまうという事件が相次ぎまあいて。
しかも、イチゴが盗み食いされた限って、朝の早いうちに、ピーヨピーヨとひときわ大きな鳴き声が菜園から聞こえてきたのです。
シャーロック・ホームズほどの頭脳がなくても、イチゴの盗難とこの鳴き声になんらの関係があると気づくはず。
で、ここからはキッタンの勝手な推測。
すっかり味をしめたヒヨドリは、この日もまたおいしいご馳走にありつけると信じて、のこのこと菜園にやって来たのではないでしょうか。
おや、人間が窓からひょっこり顔を出したって?
そんなの、関係ない。
頂くものはしっかり頂くさ。
そうして、すばやく飛び立っちゃえばこっちのものさ。
きゃつがそう思ったかどうかは知りませんが、あつかましいというか、ふてぶてしいというか、管理人には目もくれず、温室の様子を伺っていたと思し召せ。
が、待てよ。どうもいつもと勝手が違うゾ。
イチゴにかぶりつきたくても、その前になにやら邪魔ものがあって、ラックの中に入れない。
おかしいゾ?
ヒヨドリはそうやってしばらくラックの上で考えた後、今度はラックの正面が見られる位置に降りまして、ちょうどその辺にあったブロックの端に止まり、様子を伺っていました。
ここでも何度か頭をかしげ、なにやら沈思黙考の風情。
どのぐらいそこに居たでしょうか。
さすがのヒヨドリも、自分には手が出せないのに気づいたようです。
ゆっくりと飛び去って行きました。
遠くへ飛び去る前に、一度、菜園のフェンスの上に止まり、温室に名残惜しげに首をかしげた−−ように見えたのは、キッタンの空想の翼が羽ばたきすぎたせいでしょうかね。
以来、ヒヨドリの来訪はなく。
現在、2階と3階の温室をあわせると、6粒ぐらいが色づいており、そのうち3粒は、この週末に頂けるんではないかと期待しているキッタンなのでした。


